虐待防止・苦情対応と契約書の書き方:措置・窓口・外部機関・通報制度

運営基準は、虐待の防止の措置と苦情の窓口を事業者に義務づけています。運営規程・重要事項説明書・契約書に同じ内容を載せ、市町村・国保連・運営適正化委員会といった外部の窓口も案内し、通報と守秘義務の関係を整える方法を、条文に沿って整理します。

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苦情の窓口を事業所の窓口だけにしたり、苦情は書面に限ると書いたりすると、基準が想定する外部機関の調査への協力や、利用者の申出の自由と食い違います。

このページの要点

  • 虐待防止の措置は、委員会・指針・研修・担当者(サービスの類型により条文が異なる)。運営規程の記載事項にも挙がる。契約書には、措置の概要・担当者の職名・相談先を書く。
  • 苦情は、窓口の設置、内容の記録、市町村・国保連の調査への協力と改善、運営適正化委員会の調査・あっせんへの協力が基準にある。外部の窓口まで書面に書く。
  • 守秘義務に関する法律の規定は、法に基づく通報を妨げるものと解釈してはならない(両虐待防止法)。秘密保持・個人情報の条項に、通報が妨げられない旨の例外を置く。
  • 利用者・家族の禁止行為は、行為の類型と対応の段階で書き、苦情とは別の条に置く。提供拒否の禁止があるため、書いただけで解除できるわけではない。

結論:虐待防止の措置と苦情の窓口は、運営規程・重要事項説明書・契約書の三つに同じ内容で載せます

介護保険や障害福祉の運営基準は、事業者に対し、虐待の発生または再発を防止するための措置を講じることと、利用者やその家族からの苦情に迅速かつ適切に対応するための窓口の設置などの措置を講じることを義務づけています。この二つは、利用契約書の中身というより、事業所の体制を定める規定ですが、利用者から見れば「困ったときにどこに言えばよいのか」「虐待が疑われたときにどうなるのか」を示す書面の一部です。したがって、運営規程に定めた事項と、重要事項説明書に説明した事項、利用契約書に書いた条項が、同じ内容で並んでいることが、書面づくりの基本になります。

さらに、苦情や虐待の通報には、事業所の外側の制度が関わります。市町村や国民健康保険団体連合会(国保連。介護保険の費用の審査・支払を行う公的な団体で、サービスの質の向上に関する調査や指導・助言も行います)、都道府県社会福祉協議会に置かれる運営適正化委員会といった外部の窓口があり、虐待については法律に基づく通報の仕組みがあります。契約書や説明書で、事業所の窓口だけを案内し、外部の窓口を書かない、あるいは外部への申出を事実上制限する書き方は、これらの制度の趣旨と合いません。医療や介護の専門的な判断(ある行為が虐待に当たるかどうかの個別の判定)には、このガイドは立ち入りません。

虐待防止の措置:運営規程に定める事項と、委員会・指針・研修・担当者

居宅サービス基準29条は、事業所ごとに運営規程を定めることを求め、その記載事項の一つに「虐待の防止のための措置に関する事項」を挙げています(7号)。同基準37条の2は、訪問介護の事業者に対し、虐待の発生またはその再発を防止するため、次の四つの措置を講じなければならないと定めています。虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果を従業者に周知徹底すること。虐待の防止のための指針を整備すること。従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。これらの措置を適切に実施するための担当者を置くこと。

障害福祉サービスの基準は、少し形が異なります。障害福祉サービス基準3条3項は、事業者の一般原則として、利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、従業者に対し研修を実施する等の措置を講じなければならないと定めています。さらに、同基準40条の2(指定居宅介護の場合)は、虐待の防止のための対策を検討する委員会の定期的な開催と従業者への周知、従業者に対する研修の定期的な実施、これらの措置を適切に実施するための担当者の設置を定めています。確認した範囲では、同条には指針の整備の規定は置かれていません。

虐待防止の措置に関する規定の比較(確認した条文の範囲)

サービスの類型(例)条文委員会指針研修担当者
訪問介護居宅サービス基準37条の2定期的に開催し、結果を周知整備定期的に実施置く
指定介護老人福祉施設指定介護老人福祉施設基準35条の2定期的に開催し、結果を周知整備定期的に実施置く
障害福祉の指定居宅介護障害福祉サービス基準40条の2定期的に開催し、結果を周知同条には規定なし定期的に実施置く

この表のとおり、虐待防止の措置は、サービスの類型によって条文の厚みが異なります。実際の義務は都道府県(指定都市・中核市を含みます)の条例で定められるため、事業所のサービスの類型と、条例の規定を確認する必要があります。ここで、契約書や説明書に何を書くのかを考えます。委員会の議事や指針の全文を契約書に書き込むことは現実的ではありません。利用者に伝える情報としては、虐待の防止のための措置を講じていること、担当者または責任者の職名、利用者や家族がどこに相談や苦情を申し出られるか、の三点が基本です。

また、高齢者虐待防止法20条と障害者虐待防止法15条は、事業者側の措置を法律の面から定めています。高齢者虐待防止法20条は、養介護施設の設置者または養介護事業を行う者に対し、従業者の研修の実施、利用者およびその家族からの苦情の処理の体制の整備その他の高齢者虐待の防止等のための措置を講ずるものと定めています。障害者虐待防止法15条も、障害者福祉施設の設置者または障害福祉サービス事業等を行う者に対し、同様に従業者の研修の実施、苦情の処理の体制の整備その他の措置を講ずるものと定めています。苦情処理の体制の整備が、虐待の防止の措置の一部として法律で位置づけられている点は、次の節以降の理解の土台になります。

書き方の例虐待の防止に関する条項

  1. 事業者は、利用者の人権の擁護および虐待の防止のため、虐待の防止のための対策を検討する委員会の開催、従業者に対する研修の実施、担当者の設置その他の必要な措置を講じる。
  2. 事業者は、前項の措置の担当者の職名を、重要事項説明書に記載する。
  3. 事業者は、サービスの提供中に、利用者について虐待を受けたと思われる事実を発見したときは、法令の定めに従い、速やかに市町村に通報する。
  4. 利用者または家族は、虐待に関する疑いを、事業者の苦情の窓口または市町村の窓口に申し出ることができる。事業者は、申出をしたことを理由として、利用者に不利益な取扱いをしない。

書き方の例(一般的な例)です。措置の具体は、サービスの類型に応じて基準で確認します。指針の整備が基準で求められる類型では、第1項に指針の整備を加えます。通報の義務の範囲は、後の節で述べる法律の規定に従います。

苦情の受付から外部機関への対応まで:基準が求める流れ

苦情の対応は、運営基準が具体的な手順に近い形で定めています。居宅サービス基準36条は、訪問介護の事業者に対し、次のことを求めています。苦情を受け付けるための窓口を設置するなどの必要な措置を講じること(1項)。苦情を受け付けた場合は、その内容等を記録すること(2項)。市町村が行う文書その他の物件の提出・提示の求めや職員からの質問・照会に応じ、利用者からの苦情に関して市町村が行う調査に協力すること。市町村から指導または助言を受けた場合は、それに従って必要な改善を行うこと(3項)。市町村から求めがあったときは改善の内容を市町村に報告すること(4項)。さらに、国保連が介護保険法176条1項3号に基づいて行う調査に協力し、指導または助言を受けた場合は必要な改善を行うこと(5項)、求めがあったときは改善の内容を国保連に報告すること(6項)です。

苦情の記録は、保存の対象でもあります。同基準39条2項は、苦情の内容等の記録(5号)を、その完結の日から二年間保存しなければならないと定めています。保存期間は条例で確認します。障害福祉サービスの基準(障害福祉サービス基準39条)も、同様に窓口の設置、記録、市町村や都道府県などの調査への協力と改善、そして社会福祉法83条に規定する運営適正化委員会が行う調査またはあっせんにできる限り協力することを求めています(7項)。

苦情への対応の流れ(居宅サービス基準36条などを基にした一般的な流れ)

  1. 苦情の受付利用者や家族からの苦情を、窓口で受け付けます。受付の方法(電話、書面、対面など)と窓口の担当者を、重要事項説明書に書いておきます(基準36条1項)。
  2. 内容の記録受け付けた苦情の内容等を記録します(基準36条2項)。苦情を申し出た人、日時、内容、対応の経過を残します。記録は二年間保存します(39条2項5号)。
  3. 事業所内での検討と回答事実を確認して対応を検討し、申出人に回答します。回答の期限や方法は、事業所の運用として決めておきます。
  4. 市町村・国保連・運営適正化委員会への協力市町村や国保連が調査を行う場合は協力し、指導または助言を受けたときは必要な改善を行って、求めがあれば報告します(居宅サービス基準36条3項〜6項。障害福祉サービスでは、運営適正化委員会の調査・あっせんにもできる限り協力)。
  5. 外部窓口の案内事業所の窓口で解決しない場合や、事業所に直接言いにくい場合に備え、市町村の窓口、国保連、運営適正化委員会といった外部の窓口を、重要事項説明書と契約書に書いておきます。

運営適正化委員会は、都道府県社会福祉協議会に置かれ(社会福祉法83条)、福祉サービスに関する苦情について解決の申出があったときは、相談に応じ、申出人に必要な助言をし、事情を調査します(同法85条1項)。申出人と福祉サービスを提供した者の同意を得て、あっせんを行うこともできます(同条2項)。

社会福祉法82条は、社会福祉事業の経営者に対し、常に、提供する福祉サービスについて利用者等からの苦情の適切な解決に努めなければならないと定めています。この規定は努力義務の形ですが、社会福祉事業に当たるサービスの運営の前提になります。また、同法76条は、利用の申込みを受けた経営者が、契約の内容とその履行に関する事項について説明するよう努めなければならないと定めているため、苦情の窓口の案内は、契約前の説明の一部として行う性格もあります。

契約書・重要事項説明書での苦情窓口の書き方:事業所の窓口だけにしない

苦情の窓口を契約書や重要事項説明書にどう書くかは、書面づくりで最も具体的な作業になります。載せるべき項目を整理すると、事業所の苦情の窓口の名称と担当者の職名、電話番号などの連絡先と受付の時間、苦情の受付から回答までの流れの概要、市町村の担当窓口、国保連(介護保険サービスの場合)、運営適正化委員会(福祉サービスの場合)の名称と連絡先、ということになります。外部窓口の連絡先は変更されることがあるため、契約書の本文に直接書くのではなく、重要事項説明書の別紙に置いて、定期的に更新できる形にしておくのが現実的です。

書き方で特に注意したいのは、苦情の申出に条件を付ける書き方です。たとえば、「苦情は、まず書面で事業者に提出しなければならない」「事業者に申し出る前に外部の機関に申し出てはならない」といった書き方は、基準が事業者に求めているのが、苦情を受け付けるための窓口を設置するなどの必要な措置であり、利用者の申出の方法を制限することではないこと、市町村や国保連への調査の協力が義務づけられていることと合いません。事業所の窓口を案内することと、利用者が外部の窓口に申し出る自由を認めることは、矛盾しません。

書き方の例(一般的な例) 苦情の窓口に関する条項の書き方

窓口の範囲

よくある書き方「苦情がある場合は、事業者の苦情受付窓口に申し出るものとする。」とだけ書く。
整えた書き方「利用者および家族は、事業者の窓口のほか、市町村、国保連、運営適正化委員会などの窓口にも苦情を申し出ることができる。外部の窓口の連絡先は重要事項説明書に記載する。」

理由基準は、市町村や国保連の調査への協力と改善を事業者に義務づけています。外部窓口の存在を示さないと、利用者が申出の方法を限られていると受け取るおそれがあります。

申出の方法

よくある書き方「苦情は書面で提出するものとし、口頭での申出は受け付けない。」
整えた書き方「苦情は、電話、書面、面談など、利用者が選ぶ方法で申し出ることができる。事業者は、受け付けた内容を記録する。」

理由高齢の利用者や障害のある利用者にとって、書面だけが受付の方法だと、申出そのものが難しくなります。基準が求めるのは窓口の設置と、受け付けた内容の記録です。

申出後の取扱い

よくある書き方苦情を申し出た後の取扱いについて書かない。
整えた書き方「事業者は、苦情を申し出たことを理由として、利用者に対し、サービスの提供の拒否その他の不利益な取扱いをしない。」

理由条文が明文で求める事項ではありませんが、苦情の窓口の実効性を保つための書き方です。利用者が申出をためらう原因を、あらかじめ取り除きます。

虐待の通報の制度:事業者・従業者・利用者それぞれの立場と、守秘義務との関係

虐待の通報については、法律に定めがあります。高齢者虐待防止法21条1項は、養介護施設従事者等(老人福祉施設、有料老人ホーム、介護保険施設などの業務に従事する者や、居宅サービス事業などにおいて業務に従事する者)が、自分が勤務する施設や事業所で、その従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています。同条2項は、それ以外の者であっても、虐待を受けた高齢者の生命・身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに通報しなければならないとし、3項はそれ以外の場合の通報を努力義務としています。同条4項は、虐待を受けた高齢者が市町村に届け出ることができることを定めています。

障害者虐待防止法16条は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています(1項)。虐待を受けた障害者が届け出ることができること(2項)も定められています。また、「障害者福祉施設従事者等」には、障害福祉サービス事業に係る業務に従事する者が含まれます(同法2条4項)。

通報と秘密保持の関係も、条文に定めがあります。高齢者虐待防止法21条6項は、刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、1項から3項までの規定による通報(虚偽であるもの及び過失によるものを除く)をすることを妨げるものと解釈してはならないと定めています。障害者虐待防止法16条3項も同様です。そして、高齢者虐待防止法21条7項と障害者虐待防止法16条4項は、通報をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを受けないことを定めています。したがって、契約書や説明書に秘密保持の条項を置くときは、通報をすることが守秘義務に反しないことを、条項の例外として明確に書いておく必要があります。

利用者の家族などの養護者による虐待についても、通報の規定があります。高齢者虐待防止法7条1項は、養護者による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した者は、その高齢者の生命・身体に重大な危険が生じている場合は、速やかに市町村に通報しなければならないとし、同条2項は、それ以外の場合は通報に努めなければならないとしています。障害者虐待防止法7条1項は、養護者による障害者虐待(十八歳未満の障害者について行われるものを除く)を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています。守秘義務の規定が通報を妨げないことは、高齢者虐待防止法7条3項と障害者虐待防止法7条2項にも置かれています。

この養護者による虐待の通報は、契約書の書き方に影響します。事業所が、利用者の家族と契約を結び、その家族に利用者の情報を提供する関係にある場合に、その家族自身に虐待が疑われることがあるからです。契約書の個人情報や秘密保持の条項で、「利用者の情報は契約者である家族にのみ提供する」「情報の提供は契約者の許可なく第三者にしない」といった書き方をしていると、通報との関係で不整合が生じるおそれがあります。通報は法令に基づくものであることを、秘密保持と個人情報の条項に例外として書いておく必要があります。個人情報の同意と第三者提供の枠組みは、個人情報と同意書で整理しています。

利用者・家族の言動への対応は、「苦情」と「禁止行為」を混ぜずに書く

契約書には、利用者や家族の言動について、禁止事項を書くことがあります。暴力や著しい暴言、従業者へのわいせつな言動、事業所の運営を妨げる行為などです。事業者としては、従業者が安全に働けること、他の利用者のサービスが損なわれないことを守るために、こうした禁止事項を置く合理性があります。ただし、ここに「苦情」と「禁止行為」を混ぜて書くと、正当な苦情の申出まで禁止行為と受け取られるおそれがあります。

整理のしかたとして、まず、苦情は禁止事項ではなく、窓口を通じて受け付ける対象として書きます。そのうえで、禁止行為は、その内容を具体的に、できるだけ客観的な言葉で書きます。「事業者が不適切と判断した言動」のような、判断を事業者に委ねる書き方は避け、行為の類型を挙げる書き方にします。そして、禁止行為があった場合にとる対応の段階(注意、話し合い、家族への連絡、サービスの調整、最終的な解除)を書き、いきなり解除や停止に進まない構造にします。

ここで重要なのは、運営基準が、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定めている点です(居宅サービス基準9条、障害福祉サービス基準11条)。禁止行為を理由にサービスの提供を拒否したり、契約を解除したりできるのは、その行為が「正当な理由」に当たるといえる範囲に限られ、契約書に書いたというだけで正当な理由になるわけではありません。事業所からの解除・停止・提供拒否の具体的な書き方と限界は契約解除・利用停止・提供拒否で扱います。このページでは、苦情と禁止行為を書き分ける点にとどめます。

書き方の例(一般的な例) 利用者・家族の言動に関する条項の書き方

禁止行為の書き方

よくある書き方「事業者が不適切と判断した言動を行った場合は、事業者はサービスの提供を直ちに停止できる。」
整えた書き方「利用者または家族が、従業者に対する暴行、脅迫、著しい暴言、わいせつな言動、正当な理由のない長時間の拘束その他のサービスの提供を著しく困難にする行為を行ったときは、事業者は、まず注意を行い、改善されない場合に、サービスの調整その他の必要な措置を講じる。」

理由判断を事業者に委ねる書き方は、提供拒否の禁止との緊張を生みます。行為の類型を挙げて、対応の段階を示すほうが、基準の「正当な理由」の判断と整合します。

苦情との区別

よくある書き方「事業者に対する不当な要求や、事業者の運営を批判する言動は禁止する。」
整えた書き方「サービスに関する苦情や要望は、窓口に申し出ることができ、申し出たことを理由に不利益な取扱いをしない。」と書き、禁止事項とは別の条に置く。

理由批判や苦情を禁止事項に含めると、苦情の窓口を設置する基準の趣旨と矛盾します。苦情は、受け付けて記録し、対応する対象です。

虐待防止・苦情の書類を整える前の確認と、起きがちなこと

ここまでの内容を、確認の問いと、書類の突き合わせのチェックリストにまとめます。運営規程、重要事項説明書、契約書、苦情の受付票、研修や委員会の記録まで通して確かめます。

確認虐待防止と苦情対応の書類を整える前の確認

  1. 運営規程の「虐待の防止のための措置に関する事項」と、重要事項説明書、契約書の記載は同じ内容か。

    居宅サービス基準29条7号が、運営規程の記載事項に虐待防止の措置を挙げています。三つの書類で言葉が食い違うと、説明した内容と契約した内容が一致しなくなります。

  2. 事業所のサービス類型で、委員会・指針・研修・担当者のどれが基準で求められているかを、条例で確認したか。

    訪問介護や指定介護老人福祉施設では指針の整備が挙がっていますが、障害福祉の指定居宅介護の条文(40条の2)には指針の規定がありません。条例で確認します。

  3. 苦情の窓口は、事業所の窓口に加えて、市町村や国保連、運営適正化委員会といった外部の窓口まで書かれているか。

    基準は市町村や国保連の調査への協力を義務づけ、運営適正化委員会の調査・あっせんにも協力を求めています。外部窓口の案内がないと、利用者の申出の選択肢が見えません。

  4. 苦情の記録の様式があり、保存期間が決まっているか。

    居宅サービス基準36条2項が記録を求め、39条2項5号が二年間の保存を定めています。期間は条例で確認します。

  5. 秘密保持と個人情報の条項に、法令に基づく通報が妨げられない旨の例外があるか。

    高齢者虐待防止法21条6項・7条3項、障害者虐待防止法16条3項・7条2項が、守秘義務の規定は通報を妨げるものと解釈してはならないと定めています。

  6. 利用者・家族の言動に関する禁止行為が、苦情とは別に、行為の類型で書かれているか。

    苦情を禁止事項に含めると、窓口の設置と矛盾します。判断を事業者に委ねる書き方も、提供拒否の禁止との関係で問題になります。

書類の突き合わせ(チェックリスト)

  • 運営規程・重要事項説明書・契約書の三つで、虐待防止の措置と担当者の職名が一致している。
  • 苦情の窓口の連絡先、受付時間、担当者の職名が、重要事項説明書に書かれ、事業所の見やすい場所にも掲示(または備え付け)されている。
  • 外部の窓口(市町村、国保連、運営適正化委員会)の名称と連絡先が、重要事項説明書の別紙にあり、更新の手順が決まっている。
  • 苦情を申し出たことを理由に不利益な取扱いをしない旨が書かれている。
  • 秘密保持・個人情報の条項に、法令に基づく通報を妨げない旨の例外がある。
  • 禁止行為の条項が、行為の類型を挙げ、対応の段階を示している。

起きがちなこと

  • 苦情の窓口を事業所の窓口だけにし、市町村や国保連、運営適正化委員会といった外部の窓口が書かれていない。
  • 「苦情は書面で提出すること」と、受付の方法を限定し、口頭での申出が受け付けられない運用になっている。
  • 運営規程には虐待防止の措置が書かれているが、重要事項説明書と契約書には何も書かれていない。
  • 苦情の記録の様式がなく、受け付けた内容が担当者の記憶にしか残っていない。
  • 秘密保持の条項が広すぎて、法令に基づく通報まで妨げるように読める。
  • 利用者・家族への「不適切な言動」を理由とする解除を、判断基準を示さずに事業者の判断に委ねている。
  • 苦情と禁止行為が同じ条に書かれ、苦情を申し出ること自体が禁止行為のように読める。

虐待の防止と苦情の対応は、事故や身体拘束の条項と並んで、利用契約の中で利用者の権利を支える部分です。事業所の体制を示す書面として、運営規程・重要事項説明書・契約書に同じ内容を載せ、外部の窓口を含めて案内し、通報の制度と秘密保持の関係を整え、利用者・家族の言動の条項は苦情と区別して書く、という順序で整えると、書類が基準と一致します。関連する書類として、身体拘束等の禁止と契約書・同意書、事故対応と損害賠償条項、重要事項説明書の書き方も参照してください。

よくあるご質問

苦情の窓口は、契約書や説明書にどう書けばよいですか。

事業所の苦情の窓口の名称、担当者の職名、連絡先、受付時間を書いたうえで、市町村、国保連(介護保険サービスの場合)、運営適正化委員会といった外部の窓口も書くのが基本です。居宅サービス基準36条は窓口の設置などの措置、苦情の内容等の記録、市町村や国保連の調査への協力と改善を求めています。障害福祉サービス基準39条は、運営適正化委員会が行う調査またはあっせんにできる限り協力することも求めています。外部窓口の連絡先は変わり得るため、重要事項説明書の別紙に置くと更新しやすくなります。

虐待を防止するために、事業者はどのような措置を講じなければなりませんか。

訪問介護の場合、居宅サービス基準37条の2が、委員会の定期的な開催と結果の周知、虐待防止のための指針の整備、従業者への研修の定期的な実施、担当者の設置を求めています。障害福祉の指定居宅介護の場合、障害福祉サービス基準40条の2が、委員会、研修、担当者を定めています(確認した範囲では指針の規定はありません)。実際の義務は条例で定められるため、事業所のサービス類型の条例を確認します。

従業者が虐待を見つけたとき、通報は義務ですか。

高齢者虐待防止法21条1項は、養介護施設従事者等が、自分が勤務する施設や事業所で、その従事者等による高齢者虐待を受けたと思われる高齢者を発見した場合は、速やかに市町村に通報しなければならないと定めています。障害者虐待防止法16条1項は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者に、速やかに市町村へ通報する義務を定めています。通報したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています(高齢者虐待防止法21条7項、障害者虐待防止法16条4項)。

秘密保持の条項があると、通報できなくなりますか。

いいえ。刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、虚偽であるもの及び過失によるものを除く通報を妨げるものと解釈してはならないと、両法に定められています(高齢者虐待防止法21条6項・7条3項、障害者虐待防止法16条3項・7条2項)。契約書の秘密保持や個人情報の条項には、法令に基づく通報が妨げられない旨の例外を書いておきます。

暴言を繰り返す利用者や家族に対し、契約を解除できますか。

運営基準は、正当な理由なくサービスの提供を拒んではならないと定めています(居宅サービス基準9条、障害福祉サービス基準11条)。暴言などの行為が「正当な理由」に当たるといえる範囲かどうかは、行為の内容や、それまでの対応の経過によります。契約書に禁止行為を書いただけで、直ちに解除や提供拒否が認められるわけではありません。禁止行為は行為の類型で書き、注意や話し合いなどの段階を経る構造にし、苦情の申出とは区別して書きます。具体の解除の書き方は、別のページで扱います。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの種類、契約書の文言、利用者の状況によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。医療や介護の専門的な判断(身体拘束の要否、ケアの内容の適否など)には立ち入りません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会

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