障害福祉サービスの利用契約書:受給者証・契約支給量・利用者負担額・説明の配慮

障害福祉サービスの利用契約は、市町村の支給決定を前提に、契約した内容を受給者証に記載し、市町村に報告するところまでが制度に組み込まれています。契約支給量の書き方、障害の特性に応じた説明の配慮、利用者負担額と金銭の支払の区分、提供の記録の確認を、条文に沿って整理します。

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契約書にサービスごとの時間数を書き込むと、支給決定が変わるたびに契約書を作り直すことになり、受給者証の記載との食い違いも生まれます。

このページの要点

  • 流れは、支給決定、受給資格の確認、重要事項の説明と同意、契約、受給者証への記載と市町村への報告、提供の記録の確認、利用者負担額の受領の順。契約書はこの順序の中で位置づける。
  • 契約支給量は支給量の範囲内で合意する量で、総量が支給量を超えてはならない(基準10条2項)。支給量・契約支給量・実際の利用量を分けて書き、具体の量は別紙に置く。
  • 説明は障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ行う(基準9条1項)。用いた方法と本人の質問・回答を記録する。
  • 金銭の請求は、利用者負担額、特定費用、実施地域外の交通費、その他の金銭に分け、その他の金銭は使途・額・理由を書面で示して同意を得る(基準20条)。

障害福祉サービスの利用契約は、支給決定から受給者証への記載・市町村への報告までが一続きの手続です

結論から述べると、障害福祉サービスの利用契約は、事業所と利用者の二者だけで完結する私的な契約ではありません。市町村が行う支給決定を前提にして、契約した内容を「受給者証」に記載し、さらに市町村へ報告するところまでが、制度の手続として組み込まれています。したがって契約書には、サービスの種類や料金といった一般的な事項に加えて、契約支給量、受給者証への記載、利用者負担額の扱い、提供の記録の確認といった、この制度に特有の事項が欠かせません。

受給者証とは、市町村が支給決定をしたときに交付する書面で、障害福祉サービスの種類ごとの支給量などが記載されます。支給決定とは、介護給付費や訓練等給付費の支給を受けようとする人に対して、市町村が行う「支給する」旨の決定のことです。障害者総合支援法19条1項は、これらの給付の支給を受けようとする障害者または障害児の保護者は市町村の支給決定を受けなければならないと定めています。このガイドでは、成人の障害福祉サービスの利用契約を中心に扱い、児童の通所支援(児童福祉法に基づく別の基準の対象です)には立ち入りません。

基準・法令支給決定から契約までに関わる主な条文

障害者総合支援法19条1項
介護給付費等の支給を受けようとする障害者等は、市町村の支給決定を受けなければならない
同法22条7項・8項
市町村は支給決定を行うとき、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位とする支給量を定め、支給量などを記載した受給者証を交付する
同法29条2項
指定障害福祉サービスを受けようとする支給決定障害者等は、事業者に受給者証を提示してサービスを受ける(緊急の場合その他やむを得ない事由のある場合を除く)
障害福祉サービス基準9条1項(指定居宅介護の場合)
障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、運営規程の概要・従業者の勤務体制その他の重要事項を記した文書を交付して説明し、提供の開始について同意を得る
同基準10条1項〜4項
契約支給量などを受給者証に記載する。契約支給量の総量は支給量を超えてはならない。契約したときは市町村に遅滞なく報告する。記載事項の変更でも同様
同基準14条・19条・21条・22条
受給者証で支給決定の有無・有効期間・支給量を確かめる。提供の都度記録して確認を受ける。利用者負担額を受領して領収証を交付する。利用者負担額を管理する

条文の表示は、国の省令「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(障害福祉サービス基準)の、指定居宅介護の部分のものです。

ここで一点、読み方の注意があります。障害福祉サービス基準は国の省令ですが、事業所に直接の義務を課すのは、都道府県(指定都市・中核市を含みます)が条例で定める基準です。障害者総合支援法43条2項は、指定障害福祉サービス事業者は都道府県の条例で定める運営に関する基準に従ってサービスを提供しなければならないと定め、同条3項は、条例を定めるにあたって運営に関する一定の事項は主務省令の基準に従うものとしています。条例の条番号は自治体ごとに異なるため、実際に書類を整えるときは、事業所の所在地の条例と、所管の窓口が示す資料をあわせて確認する必要があります。また、生活介護、就労継続支援、共同生活援助など、サービスの種類ごとに条番号や規定の置き方が異なり、他のサービスの規定を準用している場合もあります。このページの条番号は、あくまで指定居宅介護の部分を例にした目安です。

支給決定から請求までの流れを書類の順番に置き直す

契約書を作るとき、まず手続の順序を頭に置いておくと、どの書類に何を書くかの見通しが立ちます。次の図は、支給決定を受けた利用者が事業所と契約し、サービスの提供を受けて費用を支払うまでの一般的な流れです。事業所ごとの運用の差はありますが、条文が前提としている順序は変わりません。

支給決定から利用者負担額の受領までの流れ(指定居宅介護の例)

  1. 支給決定と受給者証の交付(市町村)市町村が支給決定を行い、支給量を定めて受給者証を交付します(障害者総合支援法19条1項、22条7項・8項)。事業所の手続ではなく、利用者側の手続です。
  2. 利用の申込みと受給資格の確認申込みを受けた事業所は、受給者証で支給決定の有無・有効期間・支給量を確かめます(基準14条)。支給決定を受けていない人からの申込みなら、支給申請が行われるよう必要な援助をします(同15条1項)。
  3. 重要事項の説明と同意障害の特性に応じた配慮をしつつ、重要事項を記した文書を交付して説明し、提供の開始について同意を得ます(基準9条1項)。
  4. 契約の締結と契約支給量の定め契約書で、サービスの内容、契約支給量、費用などを定めます。契約支給量の総量は支給量を超えてはなりません(基準10条2項)。
  5. 受給者証への記載と市町村への報告契約したサービスの内容と契約支給量などを受給者証に記載し、契約したときは遅滞なく市町村へ報告します(基準10条1項・3項)。
  6. サービスの提供と記録の確認提供の都度、提供日と内容などを記録し、利用者から提供したことの確認を受けます(基準19条)。
  7. 利用者負担額の受領と領収証の交付利用者負担額を受領し、費用の支払を受けた場合は領収証を交付します(基準21条1項・4項)。

支給決定の有効期間が終わると、新しい支給決定がなければ給付は受けられません。事業所は、有効期間の終了にともなう支給申請について必要な援助を行います(基準15条2項)。契約書の有効期間の書き方は、この点と合わせて考えます。

この流れのうち、契約書が直接にかかわるのは、重要事項の説明と同意、契約の締結と契約支給量、記録の確認、利用者負担額の受領の四つの段階です。市町村への報告は事業所の義務ですが、報告の中身は契約書の記載から作られるので、契約書の記載が受給者証の記載と食い違わないことが前提になります。契約書を先に作り込んでから、受給者証の記載と報告の様式に合わせて直すのではなく、受給者証の記載事項から逆算して契約書の項目を決めると、後の手戻りが少なくなります。

もう一つ、契約の時期の問題があります。支給決定を受ける前の利用申込みに対して、事業所が先に契約書を取り交わしてしまうと、決定の内容(支給量や有効期間)が契約書と合わない事態が起こります。支給決定の前の段階では、契約書にサービス提供の見込みや仮の予定を書くことは考えられますが、契約支給量などを確定した形で書くのは、支給決定の内容が分かってからです。契約書の冒頭に「支給決定の内容に従う」という趣旨の規定を置き、契約支給量は別紙や受給者証の写しで確定させる書き方もあります。

契約支給量の書き方と、受給者証・契約書の食い違いを防ぐ方法

契約支給量とは、事業所が利用者に提供することを契約したサービスの量のことです。基準10条1項は、指定居宅介護を提供するときに、サービスの内容、契約支給量その他の必要な事項(受給者証記載事項)を受給者証に記載しなければならないと定めています。同条2項は、契約支給量の総量が、その利用者の支給量を超えてはならないと定めています。支給量はあくまで市町村が定めた上限であり、契約支給量はその範囲内で事業所と利用者が合意した量です。

契約書の側では、支給量、契約支給量、実際の利用量という三つの量を分けて書くことが大切です。たとえば、「月に○時間まで」という支給量があり、事業所が契約したのがそのうちの一部で、実際に利用した時間はさらに少ない、という状況は珍しくありません。この三つを区別せずに、契約書に「利用者は月○時間のサービスを受ける」とだけ書くと、利用実績が少なかったときの請求や、契約支給量を変更したいときの手続が曖昧になります。

条文は「契約支給量の総量」と書いており、一つの契約の中の量だけを見ればよいという書き方ではありません。利用者が複数の事業所と契約している場合や、同じ事業所と複数のサービスの契約をしている場合に、合計が支給量を超えないよう、受給者証の記載を確認することが前提になる、と読むのが自然です。他の事業所の契約内容を事業所が直接知ることは難しいため、受給者証に記載されている他の事業所の契約支給量を確かめる手順を、申込みのときの確認項目に入れておくことが実務の工夫として考えられます。

書き方の例契約支給量と受給者証への記載

  1. 事業者は、利用者の受給者証に記載された支給決定の内容(サービスの種類、支給量、支給決定の有効期間)を確認したうえで、本契約により提供するサービスの内容と契約支給量を、別紙に定める。
  2. 前項の契約支給量の総量は、利用者の支給量を超えないものとする。利用者が他の事業者とも契約している場合は、利用者は、その契約の内容を受給者証で事業者に示すものとする。
  3. 事業者は、本契約に基づくサービスの内容と契約支給量を、利用者の受給者証に記載し、契約を締結したときは、遅滞なく、これを市町村に報告する。契約支給量その他の記載事項に変更があったときも同様とする。
  4. 支給決定の内容が変更され、または支給決定の有効期間が終了したときは、事業者と利用者は、速やかに契約支給量その他の本契約の内容を見直す。

書き方の例(一般的な例)です。市町村への報告の様式や記載の方法は、自治体の定めに従います。契約支給量の別紙は、契約書本体を変えずに差し替えられる形にしておくと、内容の変更に対応しやすくなります。

書き方の例(一般的な例) 契約支給量の定め方

契約支給量の置き場所

よくある書き方契約書の本文に、サービスごとの時間数や回数を直接書き込む。
整えた書き方契約書の本文には考え方と手続(受給者証への記載・市町村への報告・変更の手続)を書き、具体的な量はサービスごとの別紙に書く。

理由契約支給量は支給決定の変更や利用者の事情によって変わります。本文に量を書き込むと、変わるたびに契約書本体の書き換えが必要になり、受給者証の記載との食い違いも生まれやすくなります。

支給量との関係

よくある書き方支給量の全量を事業所が提供するものとして書く。
整えた書き方契約支給量は支給量の範囲内で合意した量と書き、総量が支給量を超えないことを明記する。

理由基準10条2項が、契約支給量の総量は支給量を超えてはならないと定めているためです。全量の提供を約束する書き方は、人員の都合で提供できないときに債務不履行と見られるおそれもあります。

障害の特性に応じた説明の配慮を、書面と記録にどう落とすか

基準9条1項は、利用の申込みがあったとき、「当該利用申込者に係る障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ」重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得なければならないと定めています。介護保険の居宅サービスの基準が「利用申込者又はその家族に対し」説明すると定めているのに対し、障害福祉サービスの基準では、説明の相手方は「利用申込者」であり、配慮の対象は利用申込者に係る障害の特性です。同条2項は、社会福祉法77条の規定に基づいて契約成立時の書面を交付するときも、利用者の障害の特性に応じた適切な配慮をしなければならないと定めています。

社会福祉法は、これとは別の層の規定を置いています。同法76条は、社会福祉事業の経営者は、福祉サービスの利用を希望する人からの申込みがあったとき、契約の内容とその履行に関する事項について説明するよう努めなければならないと定めています。同法77条1項は、利用契約が成立したときに、遅滞なく、経営者の名称と主たる事務所の所在地、提供する福祉サービスの内容、利用者が支払うべき額に関する事項、その他厚生労働省令で定める事項を記載した書面を交付しなければならないと定めています。したがって契約の前の説明(重要事項)と、契約の成立時の書面(契約書や契約内容を記した書面)とでは、条文の根拠が分かれています。契約書がこの77条の書面を兼ねる場合は、同条1項の各号の事項が漏れなく含まれていることを確かめます。

では、障害の特性に応じた配慮とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。条文は配慮の中身を列挙しておらず、利用者ごとに異なるため、一律の方法は示されていません。書面の設計の面から、一般に考えられる工夫を挙げると、次のようなものがあります。文字の大きさや書体を選ぶこと、漢字にふりがなを付けること、長い条文を要点にまとめた説明用の資料を別に添えること、図やイラストで流れを示すこと、読み上げや点字、拡大などの方法を選べること、説明のあとに理解を確かめる時間を設けること、などです。どの方法が適当かは、利用者本人の希望や、日常的に支援している人からの情報をもとに決めることになり、事業所が一方的に決められるものではありません。

障害者総合支援法に基づく基準は、事業者の一般原則として、利用者の意思および人格を尊重して、常に利用者の立場に立ったサービスの提供に努めなければならないと定めています(基準3条2項)。さらに、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律は、事業者に対し、障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、負担が過重でないときは、必要かつ合理的な配慮をしなければならないと定めています(同法8条2項)。契約の締結の場面でも、書面の読み方や署名の方法について利用者から求めがあれば、この規定の考え方を踏まえて対応することになります。

書き方の例(一般的な例) 説明の配慮の記録の書き方

説明の記録

よくある書き方「重要事項説明書を交付し、説明した」という署名欄だけを設ける。
整えた書き方説明日、説明した人、説明の相手、用いた方法(ふりがな付き資料、要約版、読み上げなど)、本人からの質問と回答、同意の確認方法を記録する欄を設ける。

理由配慮をしたかどうかは、後から確かめられる形で記録に残っていなければ示せません。署名欄だけでは、障害の特性に応じた配慮を行ったことの裏付けになりにくいためです。

説明の用語

よくある書き方運営規程の条文をそのまま写した重要事項説明書を渡す。
整えた書き方運営規程の概要を保ったまま、利用者の生活に引き寄せた言葉に言い換え、専門用語や略語には説明を付ける。

理由基準が求めるのは「文書を交付すること」だけでなく、それを説明して同意を得ることです。文書の言葉が利用者に届かなければ、説明したことにならない場面があるためです。

契約者の側の問題、つまり本人が意思を表すことが難しいときに誰がどのような立場で署名するのかは、別のガイドの契約者は誰か(本人・家族・代理人・成年後見人)で扱います。このページでは、本人に向けた説明の配慮に絞って述べています。重要事項説明書の記載事項そのものは重要事項説明書の書き方を参照してください。

利用者負担額・交通費・金銭の支払を契約書にどう書くか

障害福祉サービスの費用の仕組みは、介護保険の仕組みと似ているところと異なるところがあります。障害者総合支援法29条3項は、介護給付費と訓練等給付費の額を、一か月につき、サービスに通常要する費用の額(特定費用を除く)から、利用者の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める額を控除した額としています。つまり、利用者が負担する額は、費用の全体から給付費を引いた残りで、その額には政令で定める上限があります。同条1項は、食事の提供に要する費用、居住や滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用、創作的活動や生産活動に要する費用のうち主務省令で定めるもの(特定費用)を、給付の対象から除いています。

契約書には、これらを三つに分けて書くと整理できます。第一は利用者負担額(給付費の対象になる費用のうち、利用者が負担する分)、第二は特定費用など、給付の対象にならない費用、第三は通常の事業の実施地域以外でサービスを提供する場合の交通費です。基準21条は、事業者が利用者から利用者負担額の支払を受けること(1項)、法定代理受領を行わない場合は基準額の支払を受けること(2項)、利用者の選定により通常の事業の実施地域以外の地域でサービスを提供するときは、それに要した交通費の額の支払を受けられること(3項)、これらの支払を受けたときは領収証を交付すること(4項)、交通費にあたるサービスの提供に先立って、内容と費用を説明して同意を得ること(5項)を定めています。

費用の区分と契約書に書くこと(指定居宅介護の例)

費用の区分根拠の例契約書・料金表に書くこと
利用者負担額障害者総合支援法29条3項、基準21条1項負担の上限の考え方、月ごとの上限額の管理をどの書類で行うか、領収証の交付の方法
法定代理受領を行わない場合の費用基準21条2項、23条2項基準額の支払を受けること、サービス提供証明書の交付
通常の実施地域以外の交通費基準21条3項・5項利用者の選定によることを前提に、交通費の額の算定方法、事前の説明と同意の取り方
その他の金銭の支払基準20条使途が直接利用者の便益を向上させるもので、支払を求めることが適当なものに限る。使途・額・理由を書面で明らかにして説明し、同意を得る

基準20条は、見落とされがちな規定です。事業者が利用者に金銭の支払を求めることができるのは、その使途が直接利用者の便益を向上させるものであって、支払を求めることが適当なものに限られます(同条1項)。そのうえで、金銭の支払を求める際には、使途と額、そして支払を求める理由を書面で明らかにし、説明して同意を得なければならないとされています(同条2項)。ただし、次条(21条)の1項から3項までの支払はこの限りではありません。したがって、契約書に「その他の費用は別途請求する」と包括的に書いておくだけでは足りず、個々の費用について、書面で使途・額・理由を示す仕組みが必要になります。

利用者負担額には、複数のサービスを受けた月の負担を合算して管理する仕組みもあります。基準22条は、利用者の依頼を受けて、同じ月に、その事業所が提供するサービスと他の障害福祉サービスを受けたときの利用者負担額の合計額を算定し、市町村に報告し、利用者と他の事業者に通知しなければならないと定めています。利用者がこの管理を事業者に依頼するかどうかは本人の意思によるので、契約書の側では、依頼の有無を確認する欄を設け、依頼があったときの事務の流れを別紙に示すとよいでしょう。この規定は、複数の事業所のサービスを受けた月の利用者負担を、合算して把握するためのものです。

書き方の例(一般的な例) 費用の書き方

その他の費用

よくある書き方「その他、事業者が必要と認める費用は別途請求する」と包括的に書く。
整えた書き方請求する費用を項目ごとに列挙し、使途・額・理由は別紙の料金表に書く。列挙にない費用は、そのつど書面で説明して同意を得ることを契約書に書く。

理由基準20条2項は、使途・額・理由を書面で明らかにして同意を得ることを求めています。包括的な書き方だと、個別の費用について同意を得た記録が残りません。

交通費

よくある書き方実施地域外では交通費を請求すると書くだけで、利用者の選定による場合かどうかを書かない。
整えた書き方利用者の選定により通常の事業の実施地域以外でサービスを提供する場合に限ること、額の算定方法、事前に内容と費用を説明して同意を得ることを書く。

理由基準21条3項・5項は、交通費を求められる場合を、利用者の選定による場合に絞り、事前の説明と同意を求めています。

提供の記録・情報の提供・苦情窓口の案内を契約書に位置づける

基準19条1項は、サービスを提供した際は、提供日と内容その他必要な事項を、提供の都度記録しなければならないと定めています。同条2項は、この記録のとき、支給決定障害者等から、サービスを提供したことについて確認を受けなければならないと定めています。介護保険の記録(居宅基準19条)が居宅サービス計画を記載した書面などへの記載を求めるのに対し、障害福祉サービスの記録は、利用者の確認を受けることが条文の形で明記されている点が特徴です。契約書の側では、記録の方法(紙の確認票、電子の確認など)、確認の頻度、本人が確認することが難しい場合の取扱い、確認票の保管を、契約書の本文または別紙に書いておくとよいでしょう。

本人が確認に署名することが難しい場合に、誰が確認の役割を担うかは、慎重に整理が必要な点です。家族や支援者が代わりに署名してよいのか、署名に代えて口頭の確認や録音などを使うのかは、契約書の側で、利用者ごとの方法を事前に決めて記録に残しておく必要があります。一律に「家族が署名する」と定めてしまうと、利用者本人の意思の確認が薄くなるおそれがあります。この点は契約者・代理人の整理とあわせて見てください。

利用者や家族に関する情報の取扱いについては、基準36条が秘密の保持を定めています。従業者と管理者は、正当な理由がなく、業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らしてはならず(1項)、これらの者であった人が漏らすことがないよう必要な措置を講じなければなりません(2項)。さらに、他の指定居宅介護事業者などに対して、利用者またはその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該利用者またはその家族の同意を得ておかなければなりません(3項)。契約書の個人情報の条項には、この文書による同意の取り方を書いておく必要があります。同意書の設計は個人情報と同意書で扱います。

苦情についても、基準39条は、苦情を受け付けるための窓口を設置するなどの必要な措置を講じること、苦情の内容等を記録すること、市町村などが行う調査への協力と、指導または助言を受けた場合の改善、社会福祉法83条に規定する運営適正化委員会が行う調査またはあっせんにできる限り協力すること、を定めています。苦情の出し先は、契約書や重要事項説明書に、事業所の窓口、市町村、運営適正化委員会といった外部の窓口を含めて書くのが基本です。苦情窓口の書き方と外部機関の整理は虐待防止・苦情対応と契約書にまとめています。

契約書に入れる項目の確認の問いと、書類の突き合わせ

ここまでの内容を、書類を作るとき、見直すときの確認の問いにまとめます。問いの順番は、手続の順番に合わせてあります。どの問いも、条文が求めている事項を、自分の事業所の書類に置き換えるためのものです。答えが「分からない」となる問いがあれば、その部分の書類が食い違っている可能性があります。

確認障害福祉サービスの利用契約書を整える前の確認

  1. 契約書の「サービスの内容」と受給者証に記載する内容は一致しているか。

    受給者証には契約したサービスの内容と契約支給量を記載します(基準10条1項)。契約書の記載とこの記載が食い違うと、利用者にも市町村にも、どちらが正しいのかが分からなくなります。

  2. 契約支給量の総量が、支給量を超えないことを確かめる手順があるか。

    基準10条2項が、契約支給量の総量は支給量を超えてはならないと定めています。他の事業所との契約を含めて、受給者証の記載で確かめる流れが、申込みの確認項目に入っているかを見ます。

  3. 契約書の有効期間は、支給決定の有効期間と整合しているか。

    給付は支給決定の有効期間内のサービスについて行われます(障害者総合支援法29条1項)。有効期間が終わった後も契約が続くのか、新しい決定を前提に更新するのかを書かないと、料金の扱いが曖昧になります。

  4. 障害の特性に応じた説明の方法を、利用者ごとに決めて記録しているか。

    基準9条1項が、障害の特性に応じた適切な配慮を求めています。配慮の内容は利用者ごとに異なるため、用いた方法を記録する欄が必要です。

  5. 利用者負担額、特定費用、交通費、その他の金銭の請求が、区分して書かれているか。

    基準20条・21条が、請求できる金銭と、説明と同意の手続を区分して定めています。包括的な請求条項は、同意の記録が残らない原因になります。

  6. 提供の記録の確認を、誰がどのような方法で行うか決まっているか。

    基準19条2項が、利用者から確認を受けることを求めています。本人が確認できない場合の方法が定まっていないと、記録の信頼性が揺らぎます。

契約書・別紙・説明資料の突き合わせ(チェックリスト)

  • 契約書、別紙の料金表、重要事項説明書、受給者証の記載で、サービスの種類・契約支給量・費用の書き方が一致している。
  • 契約書の冒頭に、支給決定の内容に従うこと、内容が変わったときの見直しの手続が書かれている。
  • 障害の特性に応じて用意する資料(ふりがな付き、要約版など)と、説明の記録欄がある。
  • 社会福祉法77条1項の事項(経営者の名称と所在地、サービスの内容、利用者が支払うべき額など)が、交付する書面に含まれている。
  • 個人情報の第三者提供について、文書による同意を得る様式がある。
  • 苦情の窓口として、事業所の窓口と、市町村・運営適正化委員会などの外部の窓口が書かれている。

障害福祉サービスの利用契約で起きがちなこと

最後に、この種の利用契約で一般に起きやすい食い違いや見落としを挙げます。特定の事業所の事例ではなく、書類を点検するときに繰り返し確かめられる論点を整理したものです。

起きがちなこと

  • 契約書にサービスごとの時間数を直接書き込んだため、支給決定の変更のたびに契約書本体を作り直す必要が生じ、受給者証の記載との食い違いが残る。
  • 契約支給量と実際の利用量を区別せずに書いたため、利用が少なかった月の請求や、契約支給量を見直したいときの手続が曖昧になる。
  • 重要事項の説明を、運営規程の条文をそのまま写した文書で行い、利用者の障害の特性に応じた配慮をした記録が残っていない。
  • 「その他の費用は別途請求する」という包括的な規定だけを置いたため、個々の費用について使途・額・理由を書面で明らかにして同意を得た記録がない。
  • 提供の記録の確認を、事実上、家族や職員の署名で済ませており、利用者本人が確認を受ける機会が確保されていない。
  • 支給決定の有効期間が終わった後も、更新の手続を取らないまま、従前の契約書でサービスを続けてしまう。
  • 苦情の出し先を事業所の窓口だけにし、市町村や運営適正化委員会などの外部の窓口を書いていない。

障害福祉サービスの利用契約は、他の契約書の書き方を当てはめるだけでは整いません。支給決定を前提とした契約支給量、受給者証への記載と市町村への報告、障害の特性に応じた説明の配慮、利用者負担額と金銭の支払の区分、提供の記録の確認と、制度が定める事項を契約書の条項と別紙に配置していくことが、書面づくりの中心です。契約全体の書類の関係は利用契約書の全体像で、事業所からの解除や提供拒否の限界は契約解除・利用停止・提供拒否で、費用の区分の考え方は利用料と費用の書き方で扱っています。

よくあるご質問

障害福祉サービスの利用契約は、支給決定の前に結んでもよいですか。

障害者総合支援法19条1項は、給付を受けようとする人は市町村の支給決定を受けなければならないと定めています。支給決定を受けていない人から利用の申込みがあったときは、事業者は支給の申請が行われるよう必要な援助を行います(基準15条1項)。決定の前の契約の取扱いは、条文だけでは一律に言えないため、所管の窓口の示す取扱いを確かめる必要があります。いずれにしても、契約支給量などは支給決定の内容が分かってから確定させるのが基本です。契約書に、支給決定の内容に従うこと、内容が決まったら別紙で契約支給量を確定させることを書いておくと、決定の内容と契約書が食い違いにくくなります。

契約支給量と支給量は何が違いますか。

支給量は、市町村が支給決定の際に障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として定める、給付の対象にするサービスの量です(障害者総合支援法22条7項)。契約支給量は、事業者が利用者に提供することを契約したサービスの量です(基準10条1項)。契約支給量は支給量の範囲内で合意するもので、総量が支給量を超えてはなりません(同条2項)。実際に利用した量は、さらにそのうちの一部ということもあります。契約書では、この三つを分けて書いておくと、請求や変更の場面で混乱しにくくなります。

受給者証には何を記載し、市町村には何を報告しますか。

指定居宅介護の場合、基準10条1項は、提供するサービスの内容、契約支給量その他の必要な事項(受給者証記載事項)を受給者証に記載することを求めています。同条3項は、利用に係る契約をしたときは、受給者証記載事項その他の必要な事項を市町村に遅滞なく報告することを求めています。変更があった場合も準用されます(同条4項)。報告の様式や方法は市町村が示すものに従い、サービスの種類によって規定の置き方が異なるため、事業所が提供するサービスの基準で確認します。

障害の特性に応じた配慮として、契約書でできる工夫はありますか。

条文は配慮の中身を列挙していません。書面の設計としては、文字の大きさやふりがな、要点をまとめた説明資料、図やイラスト、読み上げなどの方法を選べるようにすること、説明のあとに理解を確かめる時間を設けること、用いた方法と本人の質問・回答を記録することが考えられます。どの方法を用いるかは、利用者本人の希望や、日常の支援者から得た情報をもとに決めます。障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律8条2項は、事業者に対し、社会的障壁の除去を求める意思の表明があった場合に、負担が過重でない範囲で合理的な配慮を行うことを求めています。

交通費やその他の費用は、どのように請求できますか。

通常の事業の実施地域以外の地域でサービスを提供する場合の交通費は、利用者の選定による場合に限り、それに要した額の支払を受けることができ、サービスの提供に先立って内容と費用を説明して同意を得る必要があります(基準21条3項・5項)。それ以外の金銭の支払を求めることができるのは、使途が直接利用者の便益を向上させるもので、支払を求めることが適当なものに限られ、使途・額・理由を書面で明らかにして説明し、同意を得る必要があります(基準20条)。包括的に「別途請求する」と書くだけでは足りない、というのが基準の構造です。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの種類、契約書の文言、利用者の状況によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。医療や介護の専門的な判断(身体拘束の要否、ケアの内容の適否など)には立ち入りません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会

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