身体拘束等の禁止と契約書・同意書の書き方:例外の要件・記録・適正化の措置

運営基準は、緊急やむを得ない場合を除いて身体的拘束等を行ってはならないと定め、行う場合の記録を義務づけています。例外の要件に同意は挙がっていません。契約書と同意書に何を書き、何を別の書類に置くかを、条文の構造から整理します。

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契約書に「身体拘束に同意する」と書いてあっても、それが例外の要件になるわけではありません。同意書が果たせる役割は、方針を説明した記録にとどまります。

このページの要点

  • 原則禁止、緊急やむを得ない場合の例外、態様・時間・心身の状況・理由の記録は共通。委員会・指針・研修は施設系や障害福祉の基準にあり、訪問介護の23条にはない。
  • 例外の要件に利用者や家族の同意は挙がっていない。包括的な事前同意は、事業者の判断に置き換えるおそれがあり、消費者契約法10条・民法90条の観点からも慎重に扱う。
  • 契約書には原則と例外の要件と記録・説明の方針を基準と同じ言葉で書き、指針と記録の様式は別の書類に置く。同意書は「方針の説明を受けた」確認と個別の場面の記録に分ける。
  • 障害者虐待防止法は、正当な理由のない身体の拘束を虐待の類型に挙げる。見守り機器の映像などの同意は個人情報の書類で扱い、拘束の同意書に混ぜない。

結論:契約書に「身体拘束に同意する」と書いても、例外の要件にはなりません

介護保険や障害福祉の運営基準は、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(基準では「身体的拘束等」「身体拘束等」と書かれます)を行ってはならないと定めています。この「緊急やむを得ない場合」という例外の要件には、利用者本人や家族の同意が挙げられていません。ですから、契約書に「利用者は身体拘束に同意する」と書いておけば拘束を行ってよい、という整理にはなりません。

それでは、契約書や同意書は何のためにあるのでしょうか。契約書の側で担えるのは、原則として行わないこと、例外としてやむを得ず行う場合の要件と記録の手順、行った場合の利用者や家族への説明の方法を、あらかじめ利用者に示すことです。条文が求める記録(態様、時間、そのときの心身の状況、緊急やむを得ない理由)を書く様式まで含めて書類を整えることが、書面づくりの中心です。このページでは、身体拘束を行うべきか否かといった医療や介護の専門的な判断には立ち入りません。条文の構造と、契約書・同意書・記録の書き方に絞って整理します。

基準・法令身体拘束等に関する条文の骨組み(サービスの例)

指定居宅サービス基準23条3号・4号(訪問介護)
利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない。行う場合は、態様と時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録する
同基準128条4項〜6項(短期入所生活介護)、183条4項〜6項(特定施設入居者生活介護)
禁止と例外、記録に加えて、適正化のための対策を検討する委員会を三月に一回以上開催し、指針を整備し、研修を定期的に実施する
指定介護老人福祉施設基準11条4項〜6項
禁止と例外、記録、適正化のための委員会(三月に一回以上)・指針・研修
障害福祉サービス基準35条の2(指定居宅介護の場合)
禁止と例外、記録(態様、時間、心身の状況、緊急やむを得ない理由その他必要な事項)、適正化のための委員会(定期的に)・指針・研修

条番号は国の省令のものです。実際の義務は都道府県(指定都市・中核市を含みます)の条例で定められるため、条例の条番号と文言は自治体で確認します。他のサービス(通所介護など)にも同様の規定が置かれていますが、条番号はサービスごとに異なります。

サービスの種類で規定の厚みが違う:禁止と記録は共通、適正化の措置は種類による

身体拘束に関する規定は、すべてのサービスで同じ厚みではありません。禁止の原則と例外、そして記録は、介護保険の居宅サービス、施設サービス、障害福祉サービスを通じて共通して置かれています。一方、適正化のための措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施)は、施設や居住の場でサービスを提供する類型と、障害福祉サービスの基準にあって、訪問介護の条文(居宅サービス基準23条)には置かれていません。

これを表にすると次のようになります。契約書や重要事項説明書を作るとき、自分の事業所のサービス類型が、どの行に当たるのかを先に確かめます。表の内容は、このページで確認した条文の範囲にとどまり、他の類型は含みません。

身体拘束等に関する規定の比較(確認した条文の範囲)

サービスの類型(例)禁止と例外記録適正化のための措置
訪問介護(居宅サービス基準23条)ありあり(態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由)同条には定めがない
短期入所生活介護(同基準128条)ありあり委員会(三月に一回以上)・指針・研修
特定施設入居者生活介護(同基準183条)ありあり委員会(三月に一回以上)・指針・研修
指定介護老人福祉施設(同施設基準11条)ありあり委員会(三月に一回以上)・指針・研修
障害福祉の指定居宅介護(障害福祉サービス基準35条の2)ありあり(その他必要な事項を含む)委員会(定期的に)・指針・研修

記録の保存についても規定があります。居宅サービス基準39条2項は、訪問介護の提供に関する記録として、身体的拘束等の態様と時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の記録(23条4号)を、その完結の日から二年間保存しなければならないと定めています。保存の期間は、事業所に適用される条例の定めを確認する必要があります。契約書に保存期間まで書くかどうかは任意ですが、利用者から記録の開示を求められたときの取扱いを含めて、重要事項説明書か個人情報の取扱いの規定に置いておく運用が考えられます。

「同意」は例外の要件ではない:同意書が果たせる役割と果たせない役割

契約書と同意書の位置づけを、もう少し丁寧に見ておきます。条文の例外は、「当該利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合」と書かれています。これは、利用者本人や他の利用者の生命・身体を守るための必要性が、緊急かつやむを得ないといえる状況を指す書き方で、同意の有無はそこに含まれていません。したがって、同意書に署名があるかどうかが、拘束が許されるかどうかを決めるわけではありません。逆に、同意が得られないからといって、本当にやむを得ない状況が生じたときに、一切の対応ができなくなると定めているわけでもありません。

そうなると、同意書は何の証拠になるのかが問題です。同意書が果たせるのは、事業所が拘束についての考え方と手順を利用者に説明したこと、利用者や家族がそれを理解したうえで契約したことの記録です。基準は、サービスの提供にあたって利用者やその家族に対し、サービスの提供方法などについて理解しやすいように説明を行うことを求めています(居宅サービス基準23条2号、128条3項、指定介護老人福祉施設基準11条3項)。身体拘束に関する方針の説明は、この説明の一部として位置づけることができます。

ここで気をつけたいのは、「将来、事業者が必要と判断した場合にはいつでも身体拘束を行うことに同意する」という包括的な事前同意の書き方です。この書き方は、例外の要件(緊急やむを得ない場合)を、事業者の判断に置き換えてしまうおそれがあります。消費者契約法10条は、消費者の権利を制限しまたは義務を加重する条項であって、民法1条2項の基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効と定めています。また、民法90条は、公の秩序または善良の風俗に反する法律行為を無効と定めています。包括的な事前同意の条項がこれらの規定に照らしてどう評価されるかは、条項の文言と契約の全体で判断されるもので、一概には言えません。ただ、基準の例外要件を超えて、事業者に広い裁量を与える書き方は避けるのが、書面づくりの基本です。

書き方の例(一般的な例) 身体拘束に関する条項の書き方

同意の書き方

よくある書き方「利用者及び家族は、事業者が必要と判断した場合に身体的拘束その他の行動の制限を行うことにあらかじめ同意する。」
整えた書き方「事業者は、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行わない。」

理由基準の例外は「緊急やむを得ない場合」であり、事業者の判断に置き換えることはできません。原則を先に書き、例外の要件を基準と同じ言葉で書くほうが、基準と契約書が食い違いません。

責任の書き方

よくある書き方「身体拘束に起因して生じた損害について、事業者は一切の責任を負わない。」
整えた書き方責任の免除ではなく、行う場合の記録と説明の手順を書く。責任の範囲は、事故と賠償の条項で、法令の制約を踏まえて別に定める。

理由事業者の責任を全部免除する条項は、消費者契約法8条1項により無効とされる類型です。拘束に関する条項に免責を重ねても、基準上の義務は消えません。

同意書の位置づけ

よくある書き方「身体拘束について同意しました」とだけ書いた署名欄を、入居・利用の申込書に含める。
整えた書き方「身体拘束等についての事業所の方針の説明を受けました」という確認欄にし、実際に行う場面では、そのつどの状況と理由を記録する様式を別に用意する。

理由同意は例外の要件ではなく、署名欄の存在が個別の場面の正当性を示すわけでもありません。方針の説明を受けた記録と、個別の場面の記録を分けると、書類の役割がはっきりします。

契約書に書くこと・別の書類に置くこと:書類の重なりで考える

身体拘束に関する事項を、契約書に全部書き込もうとすると、条項が長くなり、契約の変更が必要になる事項まで契約書に固定してしまいます。基準が求める事項のうち、どれを契約書に置き、どれを事業所の指針や記録の様式に置くかを、書類の重なりとして整理しておくと見通しがよくなります。

身体拘束に関する書類の重なり(広く決めるものから、個別のものへ)

  1. 法令・条例(運営基準)身体的拘束等の禁止の原則、緊急やむを得ない場合の例外、記録、適正化の措置を定める。事業所ごとには変えられない前提。
  2. 事業所の指針(適正化のための指針など)施設系などでは、基準が指針の整備を求めます。委員会の運営、研修、拘束を行う場合の手順を書く。契約書より変更しやすい書類として位置づける。
  3. 利用契約書原則として行わないこと、例外の要件を基準と同じ言葉で示すこと、行った場合の記録と利用者・家族への説明の方針を、簡潔に書く。
  4. 重要事項説明書指針を整備していること、委員会を開催していること、相談・苦情の窓口を、利用申込者に分かる言葉で説明する。
  5. 個別の記録実際に行った場合の態様、時間、そのときの心身の状況、緊急やむを得ない理由を、その都度記録する。利用者・家族への説明の日時と内容もここに残す。

上の段ほど広く決めるもので、下の段ほど個別の事情を扱います。契約書に細かな運用まで書くと、指針を改めるたびに契約書の変更が必要になります。

書き方の例身体拘束等に関する条項

  1. 事業者は、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下「身体拘束等」という。)を行わない。
  2. 事業者は、前項の緊急やむを得ない場合に身体拘束等を行うときは、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況ならびに緊急やむを得ない理由を記録する。
  3. 事業者は、前項により身体拘束等を行ったときは、その内容を、遅滞なく、利用者および利用者があらかじめ届け出た家族等に説明する。
  4. 事業者は、身体拘束等の適正化を図るための指針を整備し、その概要を重要事項説明書に記載する。

書き方の例(一般的な例)です。第3項の説明は基準が明文で求める事項ではなく、記録と説明の運用として考えられる書き方です。第4項は、指針の整備が基準で求められるサービスの類型で用います。

記録の書面設計:条文が求める四つの事項を欠かさない

条文が記録を求める事項は、態様、時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由の四つです(障害福祉サービス基準35条の2第2項は「その他必要な事項」も挙げています)。記録の様式を作るときは、この四つの欄を必ず設け、空欄のまま提出できないようにするのが基本です。記録は、行為の後に思い出して書くものではなく、その場で書くか、できるだけ速やかに書くものとして運用を決めておきます。

様式の設計で見落とされがちな点を挙げます。一つは、「態様」の欄に、行為の種類を選択肢で示すのか、自由記述にするのかという問題です。選択肢だけにすると、想定していない行為が記録されず、自由記述だけにすると、記載の粒度が揃いません。両方を併用する形が現実的です。二つめは、「時間」の欄に、開始と終了の時刻を別々に書く欄があるかです。「緊急やむを得ない」という状況は一時的なものであることが多いため、時間が長くなるほど、その理由の記録が重要になります。三つめは、「理由」の欄に、他の方法を検討した経緯を書く欄があるかです。条文は他の方法の検討を明文で求めてはいませんが、緊急やむを得ない理由の記録を充実させるうえで、検討の経過が記載されていると、後から確認しやすくなります。

記録の内容を契約書の別紙として利用者に見せるかどうかも、運用の問題として決めておきます。個人情報の開示請求との関係は個人情報と同意書で扱いますが、拘束の記録は、利用者本人やその家族が後から確認を求める場面が少なくない種類の記録です。重要事項説明書に、記録を残していること、利用者や家族から求めがあったときの取扱いを書いておくと、後の食い違いを減らせます。

確認身体拘束に関する書類を整える前の確認

  1. 契約書の条項は、基準の「緊急やむを得ない場合」という例外の要件を、そのまま使っているか。

    基準の例外要件を、事業者の判断や広い裁量を認める言葉に言い換えると、基準と契約書の間に食い違いが生まれます。

  2. 記録の様式に、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の四つの欄があるか。

    居宅サービス基準23条4号などが求める記録の事項です。欄がなければ、記録そのものが基準を満たさない可能性があります。

  3. 適正化のための委員会・指針・研修が必要なサービス類型に当たるか。当たるなら、整備した旨を書類に記載しているか。

    短期入所生活介護、特定施設入居者生活介護、指定介護老人福祉施設、障害福祉サービス(指定居宅介護の場合)などでは、措置が求められています。重要事項説明書への記載で、利用申込者にも見える形になります。

  4. 同意書は、「方針の説明を受けた」という確認と、「個別の場面の記録」に分かれているか。

    同意は例外の要件ではないため、署名欄だけで個別の場面の正当性を示そうとすると、書類の役割が混ざります。

  5. 記録の保存期間と、利用者・家族からの開示請求の取扱いが決まっているか。

    居宅サービス基準39条2項が記録の保存を定め、期間は条例で確認する必要があります。開示請求の扱いは個人情報保護法の規定にもかかわります。

家族への説明と、在宅系・施設系での書類の粒度の違い

身体拘束に関する説明の相手には、利用者本人と家族があります。運営基準は、サービスの提供にあたって利用者またはその家族に対して、サービスの提供方法等について理解しやすいように説明を行うことを求めています。拘束を行った場合に、その内容を誰に、いつ、どのような方法で伝えるのかは、条文には書かれていない運用の部分です。だからこそ、事業所として方針を決め、重要事項説明書や契約書に簡潔に書いておく価値があります。決めておきたいのは、伝える相手(利用者本人、あらかじめ届け出られた家族等)、伝える時期(行ったあと遅滞なく、など)、伝える方法(口頭、書面)、伝えた内容の記録の場所、の四点です。

家族への説明では、家族の意向をどう扱うかも決めておきます。家族から「拘束してほしい」「拘束しないでほしい」と求められることがありますが、運営基準の例外は「緊急やむを得ない場合」であり、家族の意向は要件ではありません。家族の意向は、説明と記録の中で扱う情報として受け止めて記録に残し、拘束を行うかどうかは基準の要件に照らして事業所が判断する、という役割分担を書面で示しておくと、家族との間の誤解を減らせます。意向を聞いたことと、その意向に従うことは別だという点が、書面から読み取れることが大切です。

書類の粒度は、サービスの類型で変わります。在宅で提供する訪問系のサービスは、利用者の居宅で限られた時間の中で提供されるため、生活の場でサービスを提供する類型より、拘束が問題になる場面が限られることが多いと考えられます。訪問介護の条文(居宅サービス基準23条)には適正化のための措置の規定がないので、この類型の契約書では、原則禁止と例外、記録の四つの事項、家族への説明の方針を簡潔に書くのが基本になります。通所系などほかの在宅系サービスの規定は、サービスごとの基準と条例で確認します。これに対し、短期入所、特定施設、施設入所など、生活の場でサービスを提供する類型では、委員会・指針・研修が基準で求められるため、重要事項説明書にその整備状況を書き、利用申込者に分かるようにしておく必要があります。

どちらの類型でも共通する点は、契約書に書いた内容と、現場で使う記録の様式と、事業所の指針の三つが、同じ言葉で並んでいることです。契約書では「緊急やむを得ない場合」と書き、記録様式では別の言葉を使い、指針ではさらに別の基準を設けている、という状態は、後から確認したときに、どの基準で判断したのかが分からなくなります。三つの書類を並べて、用語を揃える作業を、書類づくりの最後に行います。

虐待防止法との関係と、「行動を制限する行為」の範囲の考え方

身体拘束は、運営基準だけでなく、虐待の防止に関する法律の関係でも意味を持ちます。障害者虐待防止法2条7項は、障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を定義し、その一つに、「障害者の身体に外傷が生じ、若しくは生じるおそれのある暴行を加え、又は正当な理由なく障害者の身体を拘束すること」を挙げています(同項1号)。ここでも、拘束が許されるかどうかは「正当な理由」の有無で判断され、条文は利用者の同意を要件として挙げていません。契約書に同意が書かれていることだけで正当な理由があるとは読めない、という点は、運営基準の構造と同じです。

高齢者虐待防止法2条5項は、養介護施設従事者等による高齢者虐待として、暴行、著しい減食や長時間の放置など養護すべき職務上の義務を著しく怠ること、著しい暴言や拒絶的な対応、わいせつな行為、財産の不当な処分などを挙げています。身体拘束がどの類型に当てはまるのか、あるいは当てはまらないのかは、条文と所管官庁の資料で確認が必要で、このページでは断定しません。虐待の防止の措置と通報の制度は虐待防止・苦情対応と契約書で扱います。

もう一つの論点は、「行動を制限する行為」の範囲です。基準は「身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為」と広く書いており、どのような行為がそれに当たるのかを、契約書の本文で網羅的に定義することはできません。どの行為が身体的拘束等に当たるのかの判断は、事業所の指針、所管官庁の資料、現場の専門職の判断によるもので、このガイドでは扱いません。契約書の側では、個別の方法を列挙して「これらは同意済み」とするような書き方を避け、原則と例外と記録の手順を定める書き方にとどめるほうが、基準と整合します。

見守りの機器やセンサー、居室内のカメラなどは、行動を制限するものではなく見守りのための手段として導入される場合があります。ただ、映像や位置情報の取得は、利用者の個人情報の取得になります。利用目的を特定して利用者に示し、同意を得る必要があるかは、個人情報と同意書で整理しています。身体拘束の同意書にこれらを混ぜて書くと、拘束の議論と個人情報の議論が一つの書類で絡み、どちらの同意も曖昧になります。書類を分けて、それぞれの目的と根拠を明記するのが基本です。

身体拘束に関する条項でよく見られる食い違いと、書類を見直す順序

最後に、この分野の書類で一般によく見られる食い違いを挙げます。特定の事業所の事例ではなく、書類を点検するときに確かめたい論点です。

起きがちなこと

  • 契約書に「利用者および家族は身体拘束に同意する」と包括的に書き、同意があるから行えると運用の側が理解している。
  • 記録の様式に、緊急やむを得ない理由の欄がない、または、時間の欄が「日」単位で、開始と終了の時刻が分からない。
  • 施設系のサービスなのに、委員会・指針・研修を整備した旨が、重要事項説明書にも運営規程の周知にも出てこない。
  • 同意書を入居や利用の申込書と一体にしたため、拘束への同意と他の同意(個人情報、写真の利用など)が区別されず、一括で署名させている。
  • 家族への説明を口頭で行い、説明した日時と内容を残していない。
  • 拘束の記録の保存期間と、利用者・家族からの開示請求の取扱いが決まっていない。
  • 拘束に関する免責条項と、事故に関する免責条項を重ねて書き、全体として事業者の責任をほぼ免除する形になっている。

身体拘束等の書類を見直す順序としては、まずサービスの類型に応じた基準の規定を条例で確認し、次に事業所の指針と記録の様式を整え、そのうえで契約書と重要事項説明書の条項を基準と同じ言葉に揃える、という順序がよいでしょう。契約書の条項から先に作ると、基準が求める記録や措置と食い違い、後で手直しが必要になります。契約書の中の他の条項との関係は利用契約書の全体像と事故対応と損害賠償条項を参照してください。

よくあるご質問

契約書に「身体拘束に同意する」と書いておけば、拘束を行ってよいのですか。

いいえ。運営基準は、利用者または他の利用者の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないと定めています(訪問介護なら居宅サービス基準23条3号)。例外の要件に利用者や家族の同意は挙がっていません。契約書の同意が果たせるのは、事業所の方針と手順を利用者に説明し、理解を確認した記録としての役割で、個別の場面の正当性を示すものではありません。拘束の要否そのものの判断は、このガイドでは扱いません。

身体拘束を行った場合、何を記録しなければなりませんか。

居宅サービス基準23条4号などは、態様および時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならないと定めています。障害福祉サービス基準35条の2第2項は、これらに加えて「その他必要な事項」も挙げています。訪問介護の場合、居宅サービス基準39条2項は、この記録をその完結の日から二年間保存しなければならないと定めています。実際の保存期間は条例で確認します。

委員会・指針・研修は、すべての事業所に必要ですか。

サービスの類型によります。確認した範囲では、短期入所生活介護(居宅サービス基準128条6項)、特定施設入居者生活介護(同183条6項)、指定介護老人福祉施設(同施設基準11条6項)、障害福祉サービスの指定居宅介護(障害福祉サービス基準35条の2第3項)には、適正化のための委員会、指針、研修を求める規定があります。訪問介護の同基準23条には、この措置の規定はありません。実際の義務は条例で定められるため、自分の事業所のサービスについて条例を確認します。

家族から「拘束してほしい」と言われたら、同意書があれば行ってよいですか。

家族の希望や同意は、基準の例外の要件ではありません。基準が見るのは、利用者または他の利用者の生命・身体を保護するために緊急やむを得ない状況かどうかです。家族の意向は説明や記録の中で扱う情報であり、拘束を行う根拠にはなりません。家族の意向を記録に残すこと自体は、運用として考えられます。

見守りのカメラやセンサーの同意も、身体拘束の同意書にまとめてよいですか。

まとめるのは避けたほうがよいと考えられます。身体拘束等の禁止と記録は運営基準の問題で、映像や位置情報の取得は、利用目的を特定して示し、同意の要否を整理する個人情報保護の問題です。一つの書類に混ぜると、どちらの同意も曖昧になります。書類を分け、それぞれの根拠を明記します。

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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの種類、契約書の文言、利用者の状況によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。医療や介護の専門的な判断(身体拘束の要否、ケアの内容の適否など)には立ち入りません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会

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