このページの要点
- 運営基準が求める文書による同意は、個人情報保護法の同意とは別の義務。家族の情報は家族の同意が別に必要
- 要配慮個人情報の取得、第三者への提供、目的外の利用には本人の同意。日常のサービス提供の範囲は利用目的の明示で足りる
- 第三者提供・委託・共同利用は区別して書く。委託先の監督と、外国にある第三者への提供にも注意する
- 開示・訂正・利用停止の窓口と、家族・代理人からの請求の確認方法を書面に示す。写真・映像は目的ごとに同意を分ける
介護・福祉サービスの事業所が扱う情報は、氏名や住所にとどまりません。心身の状態、病歴、障害の内容、要介護の区分、服薬、家族の構成、住まいの様子、緊急時の連絡先、ときには写真や映像まで含まれます。これらを使うたびに本人の同意が要るわけではありませんが、指定を受けた事業所には、個人情報保護法に加えて、運営基準が「あらかじめ文書により同意を得ておくこと」を求める場面があります。どの情報を、どの目的で、誰に、どの方法で使うのかを、契約書と同意書の双方で一致させておくことが、書類づくりの中心です。
このページでは、(1) 同意が必要な場面と、利用目的の明示だけで足りる場面の区別、(2) 運営基準が求める文書による同意、(3) 要配慮個人情報、(4) 第三者提供・委託・共同利用、(5) 家族の情報、(6) 開示・訂正・利用停止の請求、(7) 写真・映像・見守り機器と保存・廃棄を、順に整理します。外国にある第三者への提供については、条文の位置づけを短く触れるにとどめます。医療や介護の専門的な判断(記録に何を書くべきか、共有すべき情報の範囲が適切か)には立ち入りません。
「同意が要る場面」と「目的の明示で足りる場面」を分ける
個人情報保護法は、個人情報の取扱いについて、本人の同意を一律に求めているわけではありません。同意が必要になるのは、法律が特に定めた場面です。逆に、同意がなくても適法に使える場面が多くあり、その分、利用目的を特定して本人に示すことが、他の何よりも重要になります。
個人情報の取扱いと、本人への関わり方の整理(個人情報保護法)
| 場面 | 原則として求められること | 条文 |
|---|---|---|
| 個人情報を取り扱うとき | 利用の目的をできる限り特定する。変更は、変更前と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えない | 17条 |
| 契約書など書面で本人の情報を直接取得するとき | あらかじめ、本人に利用目的を明示する。人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要がある場合は例外 | 21条2項 |
| 特定した利用目的の範囲を超えて使うとき | あらかじめ本人の同意を得る。法令に基づく場合、人の生命・身体・財産の保護のために必要で同意を得ることが困難なときなどは例外 | 18条1項・3項 |
| 要配慮個人情報を取得するとき | あらかじめ本人の同意を得る。法令に基づく場合、生命・身体・財産の保護のために必要で同意を得ることが困難なときなどは例外 | 20条2項 |
| 個人データを第三者に提供するとき | あらかじめ本人の同意を得る。委託、事業承継、共同利用などの場合は第三者に当たらない | 27条1項・5項 |
| 個人データを外国にある第三者に提供するとき | 原則として、外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得る(提供前の情報提供が必要) | 28条 |
つまり、日常のサービス提供のために必要な範囲の利用(請求、記録、連絡、緊急時の対応など)は、利用目的を特定して契約書や同意書で明示しておけば足りる場合が多く、改めて「同意」の署名を求める必要はありません。一方、利用目的の範囲を超えるとき、要配慮個人情報を取得するとき、第三者に提供するときは、同意が必要になります。同意書の署名欄にあらゆる利用を詰め込むのではなく、「明示すれば足りるもの」と「同意が必要なもの」を分けて書くと、同意の意味が利用者や家族にも伝わりやすくなります。
運営基準が求める「文書による同意」:担当者会議と他の事業者への情報提供
指定を受けた事業所には、個人情報保護法とは別に、運営基準の側で、文書による同意が求められています。訪問介護の例では、居宅基準33条3項が、サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならないと定めています。サービス担当者会議とは、ケアプランの作成や見直しのために、利用者や家族、居宅介護支援事業者、各サービスの事業者などが集まって情報を共有し、意見を出し合う会議です。
障害福祉サービスの基準では、少し違う形で書かれています。障害基準36条3項は、他の指定事業者等に対して、利用者またはその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該利用者または家族の同意を得ておかなければならないとしています。つまり、会議の場面に限らず、他の事業者への情報提供という行為が基準の対象です。
基準・法令運営基準が求める「文書による同意」(条文の表示は訪問介護・居宅介護の例)
- 居宅基準33条3項
- サービス担当者会議等において、利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、利用者の家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならない
- 障害基準36条3項
- 他の指定居宅介護事業者等に対して、利用者またはその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該利用者またはその家族の同意を得ておかなければならない
- 居宅基準33条1項・2項、障害基準36条1項・2項
- 従業者・管理者(および従業者であった者)が、正当な理由なく、業務上知り得た利用者またはその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じる
他のサービスにも同様の規定が置かれており、条番号と対象の書き方はサービスごとに異なります。自分の事業所のサービスの基準と所在地の条例で、同じ趣旨の規定を確かめてください。
ここで押さえておきたいのは、運営基準の「文書による同意」は、個人情報保護法の同意とは別の義務だということです。個人情報保護法の上では、法令に基づく場合や、生命・身体の保護のために必要で同意を得ることが困難な場合などに同意なしで提供できる例外があっても、運営基準が求める文書による同意の取得は、事業所として別に必要です。契約書の個人情報条項や、プライバシーポリシーだけで運営基準の同意をまかなったつもりでいると、基準の求める「あらかじめ」「文書により」「家族の情報は家族の同意」という三つの要素のどこかが欠けやすくなります。
書き方の例担当者会議等における個人情報の使用に関する同意(書き方の一例)
- 事業者は、サービス担当者会議、居宅介護支援事業者その他の関係事業者との連絡調整、緊急時の医療機関への連絡のために、次の情報を、利用目的の範囲で使用する。(1)氏名、住所、連絡先 (2)介護の必要性に関する情報(要介護認定の区分、日常生活の状況など) (3)サービスの提供記録
- 利用者は、前項の使用に同意する。利用者の家族の氏名、連絡先その他の個人情報を用いる場合は、別紙の同意書により、当該家族から同意を得る。
- 前二項の同意は、利用者または家族が書面で申し出ることにより、将来に向かって撤回することができる。ただし、法令に基づく場合を除き、撤回前にすでに行った使用の効力には影響しない。
利用者の同意と家族の同意は、署名欄を分けます。利用者の同意書に家族が署名している場合、本人の同意と家族自身の同意が区別できなくなります。署名者の設計は契約者は誰かのページで整理しています。
要配慮個人情報は、取得の段階で同意を取る
介護・福祉サービスの事業所が扱う情報の多くは、「要配慮個人情報」を含みます。個人情報保護法2条3項は、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報を、要配慮個人情報としています。政令(個人情報の保護に関する法律施行令2条)は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)などの心身の機能の障害があること、医師等が行った健康診断その他の検査の結果、健康診断等の結果に基づく指導や診療・調剤が行われたことなどを挙げています。
要介護認定の区分や、日常生活の状況の記録そのものが、すべて要配慮個人情報に当たると言い切ることはできません。ただ、病歴や、障害の内容、診療の事実が書かれている書類(主治医の意見書、診療情報、サービス提供記録の一部など)を事業所が取得するときには、要配慮個人情報に当たることが多くなります。そのため、取得の段階で、あらかじめ本人の同意を得る必要があります(個人情報保護法20条2項)。ただし、法令に基づく場合や、人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難なときなどは、同意なしの取得が認められます。
実務上の問題は、情報を誰から取得するかです。介護・福祉の現場では、利用者本人からだけでなく、家族、居宅介護支援事業者、医療機関、市町村などから情報が入ってきます。要配慮個人情報を本人以外から取得する場合も、原則として本人の同意が必要です。利用者が意思を示しにくい場合は、同意の取り方が問題になりますが、これは代理や後見の問題と重なるため、契約者は誰か(本人・家族・代理人・成年後見人)のページを参照してください。
書き方の例(一般的な例) 要配慮個人情報の取得に関する書き方
同意の書き方
理由同意の対象が「一切の情報」では、何に同意したのかが分からない。要配慮個人情報の取得にあたる情報の種類と、取得先を示すと、同意の範囲が明らかになる
同意の撤回
理由撤回の方法と、撤回しても残る取扱いを示すと、利用者の理解と事業者の運用が合う
第三者提供・委託・共同利用を、書面の上で区別する
個人データを外部に出す場面は、(1) 本人の同意を得て第三者に提供する、(2) 利用目的の達成に必要な範囲で委託する、(3) 特定の者との間で共同して利用する、の三つに整理できます。個人情報保護法27条5項は、委託(1号)、事業の承継(2号)、共同利用(3号)の場合を、第三者に当たらないものとしています。事業所の書類では、この区別が曖昧なまま「第三者に提供することがある」「業務委託先に提供することがある」が並んでしまうことがあります。
個人データを外に出す場面の区別
| 場面 | 同意の要否 | 書面で書くこと |
|---|---|---|
| 第三者への提供(他の事業所、医療機関、市町村など) | 原則としてあらかじめ本人の同意が必要(27条1項)。法令に基づく場合や、生命・身体の保護のために必要で同意が困難なときなどは例外 | 提供する相手の種類、提供する情報の種類、提供の目的。運営基準の文書同意(居宅基準33条3項、障害基準36条3項)と対応させる |
| 業務の委託(請求事務、システム、記録の保管など) | 第三者に当たらない(27条5項1号)。ただし、委託先の監督が必要(25条) | 委託することがある旨と、委託先の監督を行う旨。委託先の範囲が広い場合は種類を示す |
| 共同利用(グループの事業所間など) | 第三者に当たらない(27条5項3号)。ただし、共同利用する旨、項目、範囲、利用目的、責任者を、あらかじめ本人に通知するか本人が容易に知りうる状態に置く | 共同利用する個人データの項目、利用する者の範囲、利用目的、管理責任者の氏名または名称・住所 |
| 外国にある第三者への提供(海外のクラウド等) | 原則として、外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意が必要(28条)。同意を求める際に、その外国の制度などの情報提供が必要 | 利用するシステムの所在地が国外かどうかの確認。国外の場合は個別に整理が必要 |
どの場面に当たるかは、情報を受け取る側が自分の判断で情報を使うのか、事業所の指示の範囲で処理するだけなのか、といった実態によって決まります。契約書に「業務委託先」と書いても、受け手が自社の目的で情報を使うのであれば、委託とは評価されません。委託先を使う場合は、安全管理措置(23条)、従業者の監督(24条)に加えて、委託先の監督(25条)が必要になるため、委託契約で、秘密保持、目的外利用の禁止、再委託の制限、事故時の報告、終了時の返却・消去などを定めておく書き方が一般的です。
また、個人データの漏えいなどで個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたときは、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要になります(26条)。事故が起きたときの運営基準上の連絡義務との関係は、事故対応と損害賠償条項のページで扱っています。
家族の情報は、家族の同意が別に要る
介護・福祉サービスの契約書や記録には、利用者本人の情報だけでなく、家族の情報が入ります。緊急連絡先、同居の有無、家族構成、家族の勤務先や健康状態に関する記述、キーパーソンとして位置づけられた家族の氏名などです。これらは、家族自身にとっての個人情報であり、利用者の個人情報とは別に保護されます。居宅基準33条3項が、家族の個人情報を用いる場合は当該家族の同意を文書で得ると定めているのは、この区別のためです。
利用契約の書類では、次のような場面で、家族の同意が抜け落ちやすくなります。
家族の個人情報について、点検したい場面
- 緊急連絡先として家族の氏名・電話番号を記入してもらうとき、利用目的(緊急時の連絡、サービス担当者会議での使用など)が示され、家族の同意が得られているか
- 利用者の同意書に家族が署名しているとき、その署名が「本人の代理」なのか「家族自身の同意」なのかが区別できるか
- 契約者が家族のとき、家族自身の個人情報(氏名、住所、連絡先、支払口座など)の取扱いについて、利用目的が明示されているか
- 家族間で連絡先が違うとき(遠方の家族、複数のキーパーソン)、どの家族の情報をどの範囲で他の家族や他の事業者に伝えてよいかが決まっているか
- 家族が利用者の情報の開示を求めたとき、本人の同意や、代理の資格の確認がされているか
特に、家族から利用者の情報の開示を求められたとき、「家族だから」という理由だけで本人の情報を伝えると、本人に対する守秘義務(居宅基準33条1項、障害基準36条1項)や、個人情報保護法の第三者提供の制限に抵触するおそれがあります。契約書や同意書に、情報を共有してよい家族の範囲と、その範囲の変更の方法を書いておくと、現場の判断が揃います。
開示・訂正・利用停止の請求と、家族・代理人からの請求
個人情報保護法は、本人に、自分の保有個人データについて、開示(33条)、訂正・追加・削除(34条)、利用停止・消去・第三者への提供の停止(35条)を請求する権利を認めています。保有個人データとは、事業者が開示や訂正などを行う権限を有する個人データです(16条4項)。介護・福祉サービスの提供記録、ケアの計画、利用者の申込書などは、通常これに当たります。
開示を請求されたとき、事業者は、本人が請求した方法(電磁的記録の提供を含む)により遅滞なく開示しなければなりません(33条2項)。ただし、本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、他の法令に違反することとなる場合は、全部または一部を開示しないことができます。開示しない決定をしたときは、本人にその旨を遅滞なく通知します(同条3項)。
請求の受付方法は、事業者が政令に従って定めることができます(37条1項)。同時に、請求は代理人によってもすることができ(同条3項)、手続を定めるときは本人に過重な負担を課さないよう配慮しなければなりません(同条4項)。利用者が自分で請求できない状況(認知症、障害、入院など)では、家族や後見人などが代理人として請求することになりますが、「家族だから当然に請求できる」わけではありません。契約書やプライバシーポリシーに、請求の方法(窓口、書面の様式、本人確認の方法)と、代理人が請求するときの確認書類を示しておく書き方が、実務では整います。
確認開示請求等の窓口を整えるときの問い
請求の窓口と方法(書面、電子メール、来所)を、契約書か重要事項説明書に示しているか。
請求の方法を定めておけば、利用者もその方法に従う(37条1項)。窓口がないと、現場の従業者が個別に判断を迫られる
本人確認の方法は、利用者の負担になりすぎないか。
手続を定めるときは、本人に過重な負担を課さないよう配慮する必要がある(37条4項)。高齢者や障害のある人に、複数の証明書類を求めるのは負担が重い
代理人が請求するとき、何を確認するか。
家族というだけでは代理の資格は分からない。委任状、法定代理人であることの証明、後見の登記事項証明書など、確認する書類を決めておく
開示しない場合の判断の基準と、本人への通知の方法を、内部で決めているか。
第三者の権利利益を害するおそれ(たとえば他の家族の情報が含まれる場合)があるとき、一部を開示しない判断が必要になる。決定は本人に遅滞なく通知する(33条3項)
写真・映像・見守り機器と、保存・廃棄
介護・福祉の現場では、利用者の顔写真、行事の写真、居室や訪問先の様子の撮影、見守りカメラやセンサーの映像・位置情報など、文字以外の情報も多く記録されます。顔が識別できる写真や映像は、個人情報に当たります(個人情報保護法2条1項は、特定の個人を識別できる情報を個人情報としています)。これらを何に使うのかによって、必要な手続が変わります。
写真・映像・機器の情報を使う目的ごとの整理(一般的な例)
| 使う目的 | 整理の方向 | 書面での扱い |
|---|---|---|
| サービス提供の記録(介護記録の補助、状態の経過の確認) | サービス提供に必要な範囲の利用。利用目的を特定して明示する(17条・21条2項) | 契約書か個人情報の利用目的の欄に、撮影すること、使う目的、保存の期間を書く |
| 見守り機器による安全の確認(映像、動き、位置情報) | 取得する情報の種類と目的を特定して明示する。居室内など私的な空間の撮影は、本人の意思を確かめる手続を別に設ける | 機器の種類、取得する情報、映像の確認者、保存の期間、本人または家族が映像を見られるか |
| 広報・ウェブサイト・SNS・会報への掲載 | サービス提供に必要な範囲を超える利用であり、個別に本人の同意を得るのが基本(18条1項)。顔が識別できる場合は特に注意 | 個別の同意書。同意しなくてもサービスの利用に影響しないことを明記し、同意の撤回の方法を示す |
| 研修・事例検討での使用 | 目的が事業所内の教育であっても、元の利用目的の範囲を超えるかどうかを確認する。識別できないよう加工すれば、個人情報に当たらない場合もある | 利用目的に研修・教育を含める場合はその旨を明示。外部の研修に出すときは個別の同意 |
見守り機器の映像や位置情報は、利用者の行動を継続して記録するため、取得に際して、利用者本人の意思を確かめる手続が重要です。本人が意思を示しにくい場合は、家族の同意をもって足りるのかが問題になりますが、これは、機器の設置が本人の生活の自由や尊厳を制限する程度に左右されます。身体の動きを制限する性質をもつ措置との関係は身体拘束等の禁止と契約書・同意書のページで整理しています。
保存と廃棄については、運営基準が記録の保存期間を定めています。訪問介護の例では、居宅基準39条2項が、訪問介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況等の記録などを、その完結の日から二年間保存すると定めています(なお、保存期間の起算点や年数は、サービスの種類や自治体の条例によって異なることがあります)。有料老人ホームについては、老人福祉法29条6項と同法施行規則20条の6が、帳簿の作成を求め、その保存期間を作成の日から二年間としています。個人情報保護法の上では、利用する必要がなくなった保有個人データについて、利用者が利用停止・消去を請求できる場合があります(35条5項)。
つまり、契約が終わっても、運営基準上の保存義務がある記録は、一定の期間は消去できません。他方で、保存期間が過ぎた記録や、基準上の保存義務のない写真・映像などは、利用目的を達成したら消去する、という運用を、プライバシーポリシーや重要事項説明書に書いておくことが望まれます。契約終了時の情報の取扱いは、契約解除・利用停止・提供拒否のページでも触れています。
起きがちなこと
個人情報の取扱いは、日常の業務に溶け込んでいるため、書面と実態のずれに気づきにくい分野です。契約書、同意書、プライバシーポリシー、重要事項説明書の四つで、同じ利用目的と同じ窓口が示されているかを、年に一度でも見直しておくと、ずれを小さくできます。
起きがちなこと
- 運営基準の「文書による同意」を、契約書の個人情報条項への署名で足りるものと考え、家族の情報についての家族の同意が欠けている
- 利用者の同意書に家族が署名していて、本人の同意なのか、家族自身の同意なのかが区別できない
- 同意書が「一切の情報の取得・提供に同意する」という包括的な書き方で、何に同意したのか分からない
- 「業務委託先に提供する」と書きながら、実際には受け手が自分の目的で情報を使っており、委託の範囲を超えている
- 写真や映像を、サービス提供の記録の目的で撮影し、そのまま広報や会報に使っている
- 見守り機器の設置について、本人の意思を確かめた記録がなく、家族の同意だけで設置されている
- 家族から利用者の情報の開示を求められ、本人の同意や代理の資格を確認せずに伝えている
- 契約が終わっても、保存義務のない記録がいつまでも残り、消去の基準が決まっていない
よくあるご質問
個人情報の同意書は、サービスを始めるときに必ず取らなければなりませんか。
個人情報保護法は、日常のサービス提供に必要な範囲の利用については、利用目的を特定して本人に明示することを求めていますが、一律に同意書を求めているわけではありません。ただし、指定を受けた事業所では、運営基準が、サービス担当者会議等で利用者の個人情報や家族の個人情報を用いるときは、あらかじめ文書により同意を得ることを求めています(居宅基準33条3項)。また、要配慮個人情報の取得や、第三者への提供には、原則として本人の同意が必要です。必要な同意の種類を整理して、書面に分けて書くのが基本です。
家族の連絡先を書いてもらうときにも、家族の同意が必要ですか。
家族自身の個人情報(氏名、連絡先など)を事業所が取得して使う場合、その利用目的を示すことが必要です。さらに、運営基準は、サービス担当者会議等で家族の個人情報を用いる場合は、当該家族の同意を文書で得ることを求めています。利用者本人の同意書に家族が署名しただけでは、家族自身の同意があったと区別できないため、家族の署名欄を分けておくと整います。
認知症の利用者の個人情報は、家族の同意だけで取得・提供してよいのですか。
本人の意思を示しにくい場合に、家族が代わりに同意してよいかは、家族に代理の権限があるかどうかによります。家族であることだけで当然に代理権があるわけではありません。法定代理人(成年後見人など)がいる場合はその同意、任意代理人の場合は委任の範囲の確認が必要です。生命・身体の保護のために必要で、本人の同意を得ることが困難なときは、個人情報保護法に例外がありますが、日常的な利用や広報のような目的には使えません。
利用者から、自分の記録を見せてほしいと言われたら、必ず開示しなければなりませんか。
保有個人データについて本人から開示の請求があったときは、遅滞なく開示するのが原則です(個人情報保護法33条2項)。ただし、本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがある場合、業務の適正な実施に著しい支障を及ぼすおそれがある場合、他の法令に違反する場合は、全部または一部を開示しないことができ、その場合は本人に遅滞なく通知します。他の家族の情報が混ざっている記録では、一部を開示しない判断が必要になることがあります。
利用者の写真を、事業所のウェブサイトや会報に載せるには、何が必要ですか。
サービス提供の記録のために撮影した写真を広報に使うのは、元の利用目的の範囲を超える利用になるため、あらかじめ本人の同意を得るのが基本です(個人情報保護法18条1項)。同意は、サービスの利用の条件にせず、個別の同意書で取り、掲載する媒体、期間、同意の撤回の方法を示しておきます。本人が意思を示しにくい場合の同意のとり方は、代理の資格の確認とあわせて整理する必要があります。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の契約への当てはめは、サービスの種類、契約書の文言、利用者の状況によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。医療や介護の専門的な判断(身体拘束の要否、ケアの内容の適否など)には立ち入りません。条文は e-Gov 法令検索(法令API)で確認した現行のものに基づき、まだ施行されていない改正は現行の内容として扱っていません。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会